このコンテンツは、"歴史遺産"を戯れに復活させてみただけのものです。
今となっては、何ら実用性はありません。リンクなどもほとんど機能していないでしょう。
もし、WinShellなどとても古い環境をどうしても使わなければならないなどの事情があれば、
多少は参考になるかもしれません。
2018.01.30

4.よく見ればわかるはずのコマンドの話

4-1.コマンドは「おまじない」に非ず

 この章では TeX と付き合っていく上で避けては通れない「組版命令」(以下コマンド)について解説します。TeX で原稿を作る際には、読者に伝えたい内容(本文)だけでなく、それらの文章をこれこれこういうふうにレイアウトしてね、というコマンドを書き込んでいきます。パッと見、ものすごく難しく感じられる TeX のコマンドですが、別にまったく意味不明の文字列 = おまじないではなく普通の英語なので、よく見れば必ず理解できる短い文章に過ぎません。たとえば、

\begin{center}
ザクとは違うのだよ、ザクとは。
\end{center}

という原稿があったとすると、\begin{center} と \end{center} の部分がコマンドです。どうでしょう、だいたいの意味はわかりますよね? 直訳したって「中央、はじめ」と「中央、終わり」です。これで

ザクとは違うのだよ、ザクとは。

というふうに中揃えにすることができます。簡単ですよね?

 世間ではよくこのようなコマンドの類を「おまじない」と称しますが、私は逆に、ちゃんと意味のある文字列であると考えたほうがよく使うコマンドを覚えやすいと思います。なにも手がかりのない「おまじない」よりは「中揃え…中…center…」と手がかりがあるほうが記銘は易しいはずです…よね?

 この章では、練習問題を例に用いて、基本的なコマンドの書き方と効果について解説していきます。

4-2.必要最低限これくらいわかればいいんじゃないの、というコマンドの話

4-2-1.文章全体の設定についてのコマンド

 はじめに、作成した文書の用紙サイズや行数など、ドキュメント全体のレイアウトを設定するコマンドについて解説します。これらのコマンドは \begin{document} というコマンドの前に書き込むことになっています。そのほかの場所に書き込むとエラーとなってしまいますので注意してください。では、練習問題のその部分(プリアンブルといいます)を見てみましょう。

preamble
練習問題のプリアンブル部分

 ではコマンドごとに解説していきましょう。

\documentclass[12pt,a4]{jsarticle} …文書のスタイルを設定するコマンド。ここでは jsarticle に設定されている。jsarticle は日本語の短いレポート・論文で使われるスタイルである。他にも tarticle や jsbook などのスタイルがあり、それぞれ縦書き文書や本などを作る際に用いられる。[12pt,a4] の部分はオプションで、これを加えることで文字や用紙のサイズを変更することができる。ただし、TeX では扱える文字のサイズが決まっており、16pt など自由に設定することはできない()。jsarticle で扱える文字サイズは 9pt、10pt、11pt、12pt、14pt、17pt、20pt、21pt、25pt、30pt、36pt、43pt の12種類となっている。

注:コマンドを使用すればできないこともない。詳しくは FAQ の7を参照のこと。

\usepackage[dvips]{graphicx} …使用するパッケージを指定するコマンド。パッケージとは、たとえるなら FF の「アクセサリ」のようなもので、これを用いることで様々な機能を追加することができる。{graphicx} はその名のとおり、グラフや写真などの図を扱えるようにするためのパッケージである。[dvips] の部分は上と同じくオプションである。パッケージには他にも英数字のフォントを変更するものや、自動的に索引を作ってくれるものなどがある。また、専修大学の卒論用のものもある。

\renewcommand{\refname}{引用文献} …もともと設定されているコマンドの内容を変更するコマンド。文献リストの見出しがデフォルトでは「参考文献」となっているが、基礎実験のレポートでは「引用文献」とするように決められているので、文献部分のタイトルを変更している。

\title,\author,\date …文書のあたまにタイトルや作者、日付を挿入するためのコマンド。基礎実験ではあまり使う機会がない。よって説明もしない。夏休みの課題で使うかな…ま、その時は自分で調べてください。

\begin{document} …文書のなかみがここから始まる、ということを表すコマンド。TeX はこの直後から \end{document} までの範囲内にあるテキストとコマンドを処理してdvi ファイルに出力する。

\maketitle …このコマンドを書かないと上の \title などは出力されないので注意。これは \begin{document} のあとに書く。

 ここまでが文章全体の設定をおこなうためのコマンドです。もちろんこの他にもたくさんのコマンドがあるので、作成する文書の体裁にあわせて書き加えていきます。このあとでも少し解説しています。

4-2-2.文章の構成に関するコマンド

 つづいて、文章の構成を定義するコマンドについて解説します。定義、と書きましたが、まぁそこまで難しく考えなくても「見出しを出すコマンド」ぐらいに考えておけばいいでしょう。ただ見出しを出すだけならあとで述べる文字を太くしたり大きくするコマンドを使ってもいいんですが、こちらを使ったほうが理にかなっていると思います。jsarticle で使える文書構造は以下のとおりです。

\section{節} …「節」の開始を表すコマンド。このコマンドの直後から次の \section までの範囲に書かれたテキストを1つの節とし、そのタイトルを下のように出力する。

section
\section はこんな感じ

\subsection{小節} …節(section)を細かく分けた小節(subsection)の開始を表すコマンド。次の \subsection までを1つの小節とし、そのタイトルを下のように出力する。

subsection
\subsection はこんな感じ

\subsubsection{少々節} …小節を…少々節…(以下略)。

\begin{thebibliography} 〜 \end{thebibliography}…文献リストの開始と終了を宣言するコマンド。\begin{the...} と書いた場所に \renewcommand で変更した見出し「引用文献」が出力される。

 文書の構造を表すコマンドにはこの他にも \part や \chapter などがありますが、レポートで使うことはまずないでしょう。

4-2-3.レイアウトを変更するコマンド

 ここで紹介するコマンドは限られた範囲内の文書レイアウト(書体やサイズなど)を変更するために使用するものです。文書の中のある部分を強調したい時などに用います。レポートの本文で使う機会はあまりないような気もしますが、引用文献を書く際に必要なものもあります。

\tiny,\scriptsize,\footnotesize,\small,\large,\Large, \LARGE,\huge,\Huge …いずれも文字のサイズを変えるコマンド。\tiny が最小、\Huge が最大。これらのコマンドを使う時は {\large 大きな文字} のように { } で囲む。また、コマンドと文字サイズを変更したい文章・単語との間には半角スペースをはさまないといけない。

\textbf,\textit …文字の書体を変えるコマンド。\textbf は太字、\textit は斜体に変更する。こちらのコマンドは \textbf{太字にしたい!} のように記述する。なお、TeX では日本語は斜体にならない。HTML でも使えるっちゃ使える、という程度だ。この2つのコマンドは文献リストを作る際に必須である。まず、外国の文献は書名をイタリックで記述する決まりになっている。つまり、Japan-''Sushi,Fujiyama,Geisya'' のように。また、引用した文献が雑誌・専門誌などであった場合、その巻号を太字で記述しなければいけないことになっている。なお、“太字”と“ゴシック体”はビミョーに違うものです。そのため、「ゴシック体で」と指定された時には\textbfよりも\textsfを使うほうがよいでしょう。

 上に示した2種類のコマンドは組み合わせて使用することができます。たとえば、\textbf{\large 太くて大きい文字}のようにすると、太くて大きい文字のようになります。青くはならないけどね。

4-2-4.環境

 \begin{なんとか} と \end{なんとか} のように対になったコマンドを「環境」といいます。これは、\begin と \end にはさまれた部分を中揃えや右寄せにレイアウトします。

\begin{flushleft}〜\end{flushleft} …環境の中のテキストを左寄せにする。

\begin{flushright}〜\end{flushright} …環境の中のテキストを右寄せにする。

\begin{center}〜\end{center} …環境の中のテキストを中揃えにする。

\begin{quote}〜\end{quote} …環境の中のテキストを引用部分として処理する。具体的には地の文より2文字ぶん行頭をインデントする。

 これで基本的なコマンドについての説明が終わりました。上に書いたコマンドが使えれば、レポートに限らずほとんどの文章で不自由することはないと思います。しかし、これらのコマンドをいちいち打ち込むのは面倒ですし、たいがいどこかにミスが発生します。ところがなんと WinShell にはあらかじめコマンドを登録しておいて、必要な時にボタン一つで呼び出せるという素晴らしい機能があります。それが「マクロ」と言われるものです。ここからは、そのマクロ機能について説明します。

4-3.手抜きしてコマンドを使うために

4-3-1.WinShellのマクロ機能を使う

 WinShell のマクロ機能を使えば、あらかじめ登録した図表を挿入するための一連のコマンドなどをボタン一つであっという間に入力することができ、たいへん便利です。これを活用しない手はありません。ではさっそく、その方法を説明していきましょう。まずメニューバーから [Option]-[Macros] を選択します。すると下のようなウィンドウが開くと思います(図は実際とはちょっと違うかもしれません)。

setting macro
キーマクロの設定画面

 このウィンドウでマクロをひとつひとつ設定していきます。はじめに、マクロに名前を付けます。名前は出力するコマンドの内容と関連を持たせたほうがいいでしょう。たとえば、図を表示するコマンドを登録するなら名前は figure とするなどです。その名前をNameの部分に入力します。その下はそのコマンドを呼び出すためのキーバインド(割り当て)を決める部分です。WinShell のキーマクロは Shift+Fx(xは1〜12)の組み合わせで呼び出します。F キーとはキーボード上部の F1 とか F7 のようなファンクション・キーのことです。別にいきなり F9 とかに設定しても構いはしませんが、普通は F1 から順番に設定していきます。キーバインドを決定したら [OK] を押せばマクロが登録されます。[OK] を押す前に他のマクロを登録しても構いません。自分がよく使うコマンドを登録すればするほど、WinShell での TeX 文書作成の効率が上がります。あのマクロ、どのキーに登録してたっけ? というおマヌケなこともよくありますが(^^;)どんどんマクロを活用してください。

4-3-2.よく使うコマンドをIMEに登録する

 次に紹介するコマンドを簡単に使う方法は、TeX のコマンドを MS-IME に単語として登録しておくことで、コマンドをスペースキーによる漢字変換で呼び出せるようにする、というものです。これはいくつかの TeX 解説サイトを回っている時に知ったものなのですが、けっこう目からウロコの方法でした。やり方はとっても簡単です。Windows の画面の右下、時計の横にある[あ]のアイコンを右クリックしてください。すると出てくるメニューの中の「単語・用例登録」を選択します。登録画面になるので、上段の「読み」には例えば「ふとじ」など、そのコマンドを呼び出すための名前を入力します。下段の「語句」には呼び出したいコマンド、例えば \textbf{} などを入力します。あとの「品詞」とかコメントはどうでもいいので、「登録」ボタンを押します。これで1行程度で収まるコマンドなら WinShell などでの文書作成中に簡単に呼び出せるようになります。

 さて、これでひととおりコマンドについての解説は終わりました。もちろん、これ以外にも膨大なコマンドとパッケージが TeX には用意されていますので、それらを活用すればさらに「美しい」レポートを作ることができますが、そのあたりについては「おまけ」の項で触れたいと思っています。ですがとりあえず、これだけのコマンドを知っておけばレポートは作成できると思います。そこで、5章ではいよいよ実際に基礎実験のレポートを TeX で作る上での注意事項などを説明していきます。


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